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コーヒー1杯の中にある“経営戦略”──スタバ・ドトール・タリーズの収益構造

公開日: 2025年5月23日 

🔎 ポイントまとめ

  • スタバ・ドトール・タリーズの収益構造は「価格」「店舗モデル」「ブランド軸」で大きく異なる
  • スタバは高単価直営型、ドトールは低価格FC効率型、タリーズは中価格中途型
  • 商品単価だけでなく、立地・客層・限定メニューの巧拙が利益差に直結
  • 成熟市場において、非コーヒー領域とデジタル戦略が差別化のカギを握る

はじめに

日本全国に広がるカフェチェーン。
出勤前、打ち合わせの合間、あるいは休日の午後。
「とりあえずコーヒーを買って考える」そんな人にとって、スターバックス・ドトール・タリーズはおなじみの存在だ。

この記事においては、それぞれが狙う戦略の違いのみならず、実際に飲み比べてみることでどのようなシチュエーションを想定した商品であるのかを検証し、弊研究所なりの講評をまとめた。

       

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目次

  • 今回の調査対象となるコーヒー3社
  • 市場全体の構造と3社のポジション
  • 単価の差:スタバの強さとドトールの効率
  • 営業利益率で見る「儲かる仕組み」
  • 店舗モデルの違いと利益構造
  • 出店立地とターゲットの違い
  • メニュー開発と季節性のビジネス
  • 原価・人件費・利益のバランス
  • コーヒー以外の収益源と周辺事業
  • コロナ禍と回復状況の比較
  • 3ブランドの未来戦略
  • 結論:同じ“コーヒー”でも、売り方も利益構造もまったく違う
  • 参照

一見どこも似たような業態に見えるが、その利益構造はまったく異なる。

  • なぜスタバは高単価なのに人気なのか?
  • なぜドトールは低価格でも黒字を維持できるのか?
  • なぜタリーズは個性的な割に伸び悩むのか?

本記事では、「売上」「利益率」「店舗モデル」「ブランド戦略」などの観点から、3社のビジネスモデルを定量的かつ構造的に比較していく。

今回の調査対象となるコーヒー3社

スターバックス

いわゆる「体験価値型カフェ」の代表格。
コーヒーを売っているというより、“空間と時間を売っているブランド”という印象が強い。店内デザイン、接客、商品ネーミング、季節限定メニューまで含めて世界観が徹底されていて、単なる飲食ではなく「ちょっと気分を上げに行く場所」として機能している。価格帯は高めでも支持され続けるのは、このブランド力と空間演出の強さゆえ。

スターバックス店舗の外観

ドトール

日常インフラ型カフェの象徴的存在。
価格帯・回転率・立地戦略のバランスが非常に実務的で、「毎日使える店」というポジションを確立している。豪華な空間演出よりも、スピード・手軽さ・価格合理性を重視した設計思想が明確。ビジネス街・駅前・乗換動線など、“人の流れのど真ん中”に店を構える戦略も特徴的で、まさに生活導線に組み込まれたブランドと言える。

ドトール店舗の外観

タリーズ

落ち着き・居心地重視のバランス型プレイヤー。
スターバックスほど強い世界観押し出しではなく、ドトールほど実用寄りでもない、その中間に位置するブランド。客層や立地によって柔軟にトーンを調整している印象があり、「少し静かに過ごしたい」「ゆったり仕事したい」といったニーズとの相性が良い。メニュー構成や価格設定も比較的ニュートラルで、安心感のある選択肢になっている存在。

タリーズ店舗の外観

市場全体の構造と3社のポジション

日本のカフェ市場は、2023年時点で約1.4兆円。コロナ禍で一時縮小したが、2022年以降は回復基調にある。
その中で、スタバ・ドトール・タリーズの3社は次のようなポジションにある:

ブランド運営会社店舗数(2024年)想定年商
スターバックススターバックスジャパン(米本社合弁)1,917店約2,050億円
ドトールドトール日レスHD約1,060店約970億円
タリーズ伊藤園(100%子会社)約750店約300億円

この3社でチェーン系カフェ売上の過半を占める。
ただし、戦略や店舗の成り立ちはまったく異なる。スタバは「外資×高単価」、ドトールは「国産×低価格」、タリーズは「中価格×伊藤園の傘下」。この“3極”構造が、ビジネスモデルの差に大きく影響している。

単価の差:スタバの強さとドトールの効率

まずは売上単価から見てみよう。浅井戦略研究所による店頭調べ(2025年6月時点)では、一般的な主力商品の税込価格は以下の通り:

商品スタバドトールタリーズ
アイスコーヒー(M、Tall)¥432¥330¥420
ホットコーヒー(M、Tall)¥432¥330¥450
ラテ系ドリンク(M、Tall)¥495〜610¥430〜580¥500〜600
季節限定メニュー(M、Tall)¥570〜775¥500〜550¥660〜690

スタバの価格は、ドトールの1.5〜2倍に及ぶこともある。
にもかかわらず、売上高は高く、客足も絶えない。これは、ブランド価値・空間体験・メニュー開発力によって支えられている。
一方、ドトールは低価格帯ながらも回転率と店舗数による安定収益を実現しており、「薄利多売モデル」の完成形に近い。
タリーズは中間に位置するが、価格に対して収益性が劣後しているという課題を抱えている。

スターバックス

スターバックス:Tallサイズ アイスコーヒー432円(税込)

スターバックス:Tallサイズ ブリュードコーヒー432円(税込)

ドトール

ドトール:Mサイズ アイスコーヒー330円(税込)

ドトール:Mサイズ ブレンドコーヒー330円(税込)

タリーズ

タリーズ:Mサイズ アイスコーヒー420円(税込)

タリーズ:Mサイズ コーヒーホリデー450円(税込)

各ブランドにおける総評 (研究員による検証)

  • スターバックス:味が濃く、苦味・酸味が強い。1番味が濃くコーヒー特有の味わい
  • ドトール:味が薄く、アメリカンのような味わい。ホット・アイスともにサイズ差が気になる
  • タリーズ:味はスターバックス・ドトールの中間で軽め。まろやかであるが味が酸っぱめ
同じアイスコーヒーでほぼ同じサイズであるが、販売価格の違いがよく分かる

一方、ホットコーヒーにおいてはサイズが異なり、アイスコーヒーとの販売戦略に違いがあることが分かる

作業中や勉強中に飲むならタリーズ、コーヒーを飲む目的が強ければスターバックスという印象があり、それぞれ目的を持った飲用シチュエーションがあるのではないかと見立てた。

営業利益率で見る「儲かる仕組み」

2023年度の営業利益率を比較すると、次のような構図になる:

ブランド売上高営業利益営業利益率
スタバ約2,050億円約230億円約11.2%
ドトール約970億円約66億円約6.8%
タリーズ約300億円約7億円約2.3%

スタバは高単価商品+ブランド力により、外食業界では異例の10%超の利益率を実現。
ドトールも堅実に黒字を出しているが、価格の低さゆえ、収益構造は“回転と量”が命となる。
タリーズは商品の価格帯に比して利益率が低く、「中途半端なポジショニング」が収益性の足を引っ張っている可能性がある。

店舗モデルの違いと利益構造

コーヒーチェーンの収益性は、商品単価だけでなく店舗の運営方式にも大きく左右される。
以下は各ブランドの主な運営形態:

ブランド直営比率FC比率備考
スターバックス約90%約10%基本は直営・一部ライセンス制
ドトール約60%約40%駅ナカ・中小商業施設中心
タリーズ約50%約50%大型モール・大学・病院内などに展開

スターバックスは直営モデルで一貫性とブランド体験を維持しつつ、高粗利構造を保ちやすい。一方、ドトールとタリーズはFC展開が多く、スケールは出るが利益率は低くなりやすいという構造にある。

出店立地とターゲットの違い

立地戦略もブランドポジションに直結している。
以下はそれぞれの主力立地:

  • スターバックス:都市部・駅前・商業施設内。学生・会社員・女性層が中心
  • ドトール:オフィス街・駅ナカ・ビル1F。中高年・ビジネスマンが中心
  • タリーズ:大学・病院・郊外モール。ファミリー・学生・やや若年層

スタバが“時間を過ごす空間”を売っているのに対し、ドトールは“日常のルーティン”に入り込んでいる。タリーズはその中間で、ややポジションが定まりきらない状況とも言える。

メニュー開発と季節性のビジネス

コーヒーチェーンの売上において、季節限定メニューの開発力は重要なファクターだ。
各社の代表的な特徴:

  • スターバックス:さくらラテ、パンプキンスパイスラテなど、SNS映え重視の限定商品がヒット
  • ドトール:ベーシックなフレーバー中心。限定品は出すが保守的
  • タリーズ:コンセプト性重視の季節商品を展開するが、拡散力は限定的

スタバは“飲むファッション”とも言える魅せ方ができるため、客単価と来店動機を両立できている。一方ドトールは限定商品の比率が低く、あくまでルーチン消費に徹している。

原価・人件費・利益のバランス

外食ビジネスで重要なのがFL(原材料費+人件費)コスト。おおよその構造は以下のとおり:

ブランド原価率人件費率コメント
スターバックス約35%約30%高付加価値・人件費も高いが単価で吸収
ドトール約38%約28%効率重視・人件費率低め
タリーズ約40%約33%規模の割にオペレーション効率が低い傾向

スタバは人件費も設備投資もかけているが、ブランド力と単価で回収している点が特徴的。ドトールは設備・人材ともに軽量で、コスト効率の極致にある。

コーヒー以外の収益源と周辺事業

3社はいずれも「コーヒー売上」だけに頼っていない。
以下は周辺事業の例である:

  • スターバックス:グッズ(タンブラー・カップ)、食品、コーヒー豆のEC販売、アプリ課金・ポイント制度
  • ドトール:ミラノサンドやモーニングなど軽食の売上比率が高く、食品メーカー機能も保有
  • タリーズ:ギフト・紅茶商品・ボトルドリンク等の多角展開

特にスタバの「ブランド商品」と「リワード会員制度」は強力で、リピーターの囲い込みと単価向上に貢献している。ドトールは食品技術に強みを持ち、レトルトや家庭向け商品のBtoB展開も強化中だ。

コロナ禍と回復状況の比較

2020〜21年のコロナ禍では、カフェ業態は大きな打撃を受けた。
その後の回復状況は以下のように異なる:

年度スタバドトールタリーズ
2020△(売上約80%)△(店内利用激減)△(施設休業影響大)
2021◯(ドリンク強化)◯(モバイル対応拡大)△(回復鈍い)
2022◎(ほぼV字回復)◯(既存客戻る)△(苦戦続く)
2023◎(業績最高益)◯(安定維持)△(店舗再編中)

スターバックスはデジタル戦略と高単価で素早く立て直した。一方、タリーズは立地依存度が高く、回復に時間を要している。

3ブランドの未来戦略

今後の成長を見据えた動きはこうだ:

  • スターバックス:サステナビリティ・リユーザブル戦略の推進、地方出店拡大、AI接客・アプリ連携強化
  • ドトール:人手不足対応(券売機化)、業務提携による地方出店網拡大、食品工場の活用
  • タリーズ:ブランド再構築、グッズ・紅茶市場への再注力、伊藤園との連携強化

すでに飽和気味の市場の中で、今後は「ブランドの個性」+「非コーヒー領域の強化」が鍵を握る。スタバが圧倒的に強いように見えても、コストパフォーマンスや日常性ではドトールが根強く、タリーズにも再浮上の余地がある。

結論:同じ“コーヒー”でも、売り方も利益構造もまったく違う

一杯のコーヒーを通じて提供される価値は、企業によってまったく異なる。

  • スターバックスは「空間と自己表現」
  • ドトールは「生活の隙間を埋める実用性」
  • タリーズは「中価格帯での選択肢の多様性」

このように、価格・利益率・客層・業態すべてが異なる3社は、単なるライバルではなく“住み分けたプレイヤー”として共存している。
そしてそれぞれが、自社に合った利益モデルを模索しながら、コーヒーを“飲み物以上の価値”に昇華させ続けているのだ。

参照

スターバックスジャパン公式HP
ドトール・日レスホールディングス 2023年度決算説明資料
伊藤園・タリーズコーヒー関連プレスリリース
日本フードサービス協会(外食市場動向)
各社アプリ・店頭価格・決算短信(2023〜2024)

🔎 ポイントまとめ

  • スタバ・ドトール・タリーズの収益構造は「価格」「店舗モデル」「ブランド軸」で大きく異なる
  • スタバは高単価直営型、ドトールは低価格FC効率型、タリーズは中価格中途型
  • 商品単価だけでなく、立地・客層・限定メニューの巧拙が利益差に直結
  • 成熟市場において、非コーヒー領域とデジタル戦略が差別化のカギを握る

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