コンテンツへスキップ
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • 本研究所について
浅井戦略研究所 | ASSI
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • 本研究所について
ログイン
浅井戦略研究所 | ASSI

フェムケア経済圏:なぜ“話しにくい”市場が熱いのか?

公開日: 2025年6月14日 

🔎 ポイントまとめ

  • フェムケア市場の拡大:フェムケア市場は、生理・妊活・更年期・セクシャルウェルネスまで含む広い領域として、2020年代を通じて拡大を続けている。

  • 市場成長を支える健康課題の可視化:市場成長の背景に、月経痛やPMSなど女性の健康課題が日常生活や就業に与える負担の大きさが可視化され、それに対する支出が進んできたことがある。

  • 複層化する収益モデル:商品販売だけで成り立つ市場ではなく、定期購入、月額課金、企業向け福利厚生や健康経営支援まで含む複層的な収益モデルへ広がっている。

  • 生活インフラ化するフェムケア:プレイヤーや商品群も多様化しており、フェムケアは消費財から実務的な生活インフラへと変化しつつある。

はじめに

「フェムケア」や「フェムテック」という言葉がメディアで見かけられるようになって久しい。かつてはタブー視されていた月経やPMS、不妊、デリケートゾーンケアといった領域が、今や急速に消費と事業の対象になっている。2020年代以降、この分野は女性の自己決定・ウェルビーイングと結びつきながら、静かに、しかし確実に経済圏を広げている。
本稿では、フェムケア市場の成長背景と構造、主なプレイヤー、そして「話しにくい領域」がどのように収益モデルとして成立し始めているのかを明らかにする。

       

このナレッジをシェアする

目次

  • フェムケア市場の定義と成長
  • なぜ今、話しにくいテーマが“売れる”のか?
  • プレイヤーと商品群の多様化
  • ビジネスモデルと広告展開の工夫
  • おわりに
  • 参照

フェムケア市場の定義と成長

フェムケア市場とは、女性の生理・妊娠・更年期・デリケートゾーン・PMSなどに関する課題解決を目的とした商品・サービスの総称である。まず整理しておきたいのは、「フェムケア」と「フェムテック」はしばしば一括りに語られるが、実際には同じではないという点である。経産省はフェムテックを、女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品・サービスとして整理している。これに対し、市場では吸水・生理関連用品、更年期ケア、妊娠・産後ケア、セクシャルウェルネスなど、消費財も含む広い領域が動いている。

日本でフェムテックが話題になり始めた2020年は「フェムテック元年」と呼ばれ、翌年2021年11月には「フェムテック」が流行語大賞にノミネートされるなど、2020年代に入ってから注目を浴びた。一方で、言葉そのものの認知度は依然として高いとは言い切れない。経産省資料では、2022年時点ではどの年代でも「意味を知っている」女性は1割未満と整理されている。つまり日本のフェムケア市場は、流行語として一気に広がったというより、生理、PMS、妊活、更年期といった具体的な困りごとへの支出が先に進み、そのあとから言葉が追いついてきた市場である。

国内の市場データ

矢野経済研究所によると、国内のフェムケア・フェムテック関連市場は、2020年の599.48億円から2025年には888.60億円に達する見込みであり、2020年代を通じて一貫した拡大傾向を示している。前年比もおおむね107〜110%台で推移しており、市場の成長が持続している。近年は更年期ケアとセクシャルウェルネスが市場拡大を牽引していることがうかがえるが、それとは別に、月経管理アプリ、オンライン健康医療相談、郵送検査などを含む女性関連ヘルスケア・医療としてのフェムテック市場は、2024年度で84.9億円と推計されている。

なぜ今、話しにくいテーマが“売れる”のか?

背景にあるのは、我慢のコストが可視化されたからである。内閣府の調査では、月経に関わる不調のうち生活への支障があると答えた割合は、月経痛が73%、月経中の体調不良が70%、PMS等が66%にのぼる。つまり、フェムケア市場は“新しいおしゃれ商材”だから伸びているのではなく、日常生活や就業に影響する不調に対して、セルフケアや支援サービスへの支出が発生し始めた結果として拡大している。

収益モデルは「商品販売」だけではない

フェムケア市場は、D2Cや定期購入型の商品販売だけでなく、企業向け導入や健康経営の文脈でも広がっている。経産省は、月経随伴症、更年期症状、婦人科がん、不妊治療など女性特有の健康課題による経済損失を年間約3.4兆円と試算している。こうした背景から、フェムテックは個人のセルフケア用品としてだけでなく、就業継続支援や福利厚生の一部として導入される領域にもなってきた。実際、経産省のフェムテック等サポートサービス実証事業は、令和3年度以降の4年間で70件を採択している。

プレイヤーと商品群の多様化

フェムケア・フェムテック市場の広がりは、単に商品点数が増えたというだけではない。プレイヤーの顔ぶれ自体が多様化しており、専業スタートアップだけでなく、IT・ヘルスケア企業、日用品やアパレル系のD2Cブランド、セルフケアブランド、さらに法人向け支援サービスまで参入領域が広がっている。

プレイヤーと商品群の例

  • Bé-A(ベア):吸水ショーツを主力とするフェムケアブランド。多い日向けや軽やかな着用感を打ち出したモデルなど、吸水量や着用感の異なる商品を展開している。
  • iroha INTIMATE CARE:デリケートゾーン向けのセルフケアブランド。弱酸性・低刺激を打ち出したソープなど、日常的なインティメートケア製品を展開している。
  • ルナルナ:生理日管理を軸に、妊活、妊娠・出産、育児、更年期、オンライン診療によるピル処方サポートまで展開する、総合型のウィメンズヘルスサービス。
  • ルナルナ オフィス:月経、妊活、更年期、男性更年期を対象に、企業向けのオンライン診療・相談や研修を提供する法人向けサービス。フェムテックのBtoB展開の例として位置づけられる。
  • WRAY(レイ):女性の周期やゆらぎに着目したセルフケアブランド。PMSなどに関連する情報発信や、周期バランスを意識したサプリメントを展開してきた。

主要カテゴリ

  • 月経関連:ナプキンや吸水ショーツなどの生理用品、月経にともなう不快感の軽減や日常生活の負担軽減に関わるカテゴリ。
  • 不妊・妊よう性/妊娠・産後ケア:妊活、不妊治療の支援、妊娠中や産後のケアなど、妊娠前後のライフステージに関わるカテゴリ。
  • 更年期ケア:更年期にともなう心身の不調に対応する商品・サービス群。
  • ウィメンズヘルスケア:生理や妊娠に限らず、女性の健康課題全般を支えるサービス領域。
  • セクシャルウェルネス:性と身体の快適さ、セルフケア、親密性に関わる商品・サービスのカテゴリ。

ビジネスモデルと広告展開の工夫

フェムケア市場のビジネスモデル

toCの文脈で見ると、フェムケア市場の売り方は「単発で売って終わり」ではない。生理、ゆらぎ、冷え、鉄不足、周期管理といった悩みは一度きりではなく、月単位で繰り返される。だからこそ、各社の設計も継続利用に寄っている。ルナルナは個人向けに月額制のプレミアムコースを用意し、Bé-AとWRAYは公式EC上で定期便を展開している。とくにWRAYは、定期便の配送サイクルを最短30日から最長90日で設定できる仕組みを公開しており、フェムケア商材が「気になったときに一度買うもの」ではなく、「生活のリズムに組み込むもの」として売られていることがわかる。フェムケアは必要性があっても後回しにされやすい領域だからこそ、「良い商品」であること以上に、「続けやすい買い方」であることが重要になる。

広告展開の工夫

広告の作り方も特徴的である。フェムケア商材は、スペックだけでは購買につながりにくい。使用シーンや悩みの輪郭がはっきりしていないと、自分ごとになりにくいからだ。そのため各社は、広告を「露出」ではなく「理解の補助」として組み立てている。ルナルナは読みものコンテンツを継続的に発信し、Bé-Aは自社メディアとして Journal を運営し、WRAYも読み物やストーリーを通じてブランドの文脈を作っている。フェムケア市場では、商品紹介より先に、「なぜ必要なのか」を言語化するコンテンツそのものが販促になっている。

つまりtoCのフェムケアは、派手なマス広告で一気に売る市場というより、公式EC、定期購入、オウンドメディア、SNSを重ねながら、悩みの理解から購入、継続利用までを一本の導線にしていく市場だと言える。売っているのは商品そのものだけではなく、続けられること、試しやすいこと、そして自分の悩みに名前がつくことまで含めて、消費の設計になっている。

おわりに

フェムケア市場の拡大は、「タブーが売り物になった」という単純な話ではない。言葉の認知はまだ高くない一方で、女性の健康課題はすでに生活と仕事に深く影響しており、その対処に対して個人も企業もお金を払うようになっている。現在のフェムケア市場を支えているのは、共感や自己肯定感だけではなく、不調の可視化、就業継続の必要性、そして制度化の進展である。市場はブームだけで膨らんでいるのではなく、消費財、サービス、福利厚生、医療周辺を横断しながら、より実務的なインフラへと姿を変えつつある。

参照

  • 経済産業省「経済産業省における女性活躍推進」
  • 内閣府 令和5年度 男女の健康意識に関する調査 報告書のポイント
  • 内閣府男女共同参画局「令和5年度 男女の健康意識に関する調査 報告書のポイント」
  • 矢野経済研究所 フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査を実施(2025年)
  • ルナルナ ウィメンズヘルスケアサービス
  • ルナルナ オフィス
  • Bé-A〈ベア〉公式オンラインストア
  • iroha INTIMATE CARE
  • WRAY 公式サイト

🔎 ポイントまとめ

  • フェムケア市場の拡大:フェムケア市場は、生理・妊活・更年期・セクシャルウェルネスまで含む広い領域として、2020年代を通じて拡大を続けている。

  • 市場成長を支える健康課題の可視化:市場成長の背景に、月経痛やPMSなど女性の健康課題が日常生活や就業に与える負担の大きさが可視化され、それに対する支出が進んできたことがある。

  • 複層化する収益モデル:商品販売だけで成り立つ市場ではなく、定期購入、月額課金、企業向け福利厚生や健康経営支援まで含む複層的な収益モデルへ広がっている。

  • 生活インフラ化するフェムケア:プレイヤーや商品群も多様化しており、フェムケアは消費財から実務的な生活インフラへと変化しつつある。

このナレッジをシェアする

FOLLOW US

浅井戦略研究所の更新情報は、Xでもお知らせしています

浅井戦略研究所では、新しい分析記事の公開や注目テーマをXアカウントでもお知らせしています。

𝕏 @ASSI_Asai をフォロー

関連ナレッジ

メディア事業の収益化への道:Google AdSenseに10ヶ月&11回落ち続けた理由と“有用性”の正体

「観光」から「滞在」へ、ワーケーションとデジタルノマドが変える日本の地域経済

韓国コスメ経済圏: 新大久保から”肌管理”までの消費変化

← 前のナレッジ
コーヒー1杯の中にある“経営戦略”──スタバ・ドトール・タリーズの収益構造
かき氷の経済学:500円→1,500円になった“氷と空気”の戦略 次のナレッジ →

浅井戦略研究所について

「ビジネスシチュエーションで戦略を考える皆様とステークホルダーの意思決定を“少しだけ”後押しする研究所」
私たちは、企業経営や市場構造の「なぜ?」に迫る、戦略特化型リサーチメディアです。

一次情報(決算・IR・業界統計など)とロジカルな解釈力を活かし、
“表面的な話題”と“研究所ならではの見立て”で構成されるナレッジを発信しています。

「インターネットで検索しただけ」だと上司や先輩に怒られそう。「誰かに聞いただけ」だと心許ない。
でも、コンサル会社や調査会社に頼む予算なんて無い。そんな時、誰しもにとって「浅井戦略研究所が書いていた」と言ってもらえる"ほどよい"サポーターであることを目指しています。

お問い合わせ / ご相談窓口

記事内容へのご質問や
リサーチ・取材依頼、コラボレーションのご依頼などは
以下のフォームよりお気軽にご連絡ください。

お問い合わせフォームへ

はじめての方へ

浅井戦略研究所を知るなら、まずはこの3本から。

  • 国内検索エンジンのマーケットシェア
  • 大手コンビニの売上推移とマーケットシェア
  • 大手コーヒーチェーンの利益モデル比較

テーマから探す

ライフスタイル 流通/小売 飲食/フード テクノロジー/IT 海外カルチャー 消費トレンド ローカル×観光 健康/美容

スポンサーリンク

最新記事

  • メディア事業の収益化への道:Google AdSenseに10ヶ月&11回落ち続けた理由と“有用性”の正体
  • 「観光」から「滞在」へ、ワーケーションとデジタルノマドが変える日本の地域経済
  • 韓国コスメ経済圏: 新大久保から”肌管理”までの消費変化
  • 「アボカド選び」はなぜこんなにも難しいのか -流通構造からの分析-
  • アパレル販売員がフリーランスデザイナーになるまで──異業種転換とキャリア設計の実践論

ナレッジを検索

注目特集

国内検索エンジンにおけるマーケットシェアと今後の見立て 市場の変化を長期推移で整理した、代表的な分析記事です。

浅井戦略研究所とは

企業経営や市場構造の「なぜ?」に迫る、戦略特化型リサーチメディアです。 一次情報とロジカルな見立てをもとに、意思決定を“少しだけ”後押しするナレッジを発信しています。

本研究所について →

公式X

新しい分析記事の公開や注目テーマを、Xでもお知らせしています。

@ASSI_Asai をフォロー

スポンサーリンク

プライバシーポリシー

Copyright © 2026 - 浅井戦略研究所 by NEOf Inc.