駄菓子屋の経済学:なぜ令和に“10円”が生き残っているのか?
🔎 ポイントまとめ
- 駄菓子屋は観光・商業・地域拠点として多様に展開
- 利用率は極めて低いが、ゼロではない商品単価は低くても高粗利で成立する経済構造
- 子どもと高齢者を結ぶ地域インフラとしての機能
- インバウンドやECで「昭和文化」が国際価値に
はじめに
昭和の時代を象徴する存在であり、かつて子どもたちの社交場だった「駄菓子屋」。コンビニや100円ショップの普及により姿を消したかと思いきや、近年、再びその姿がまちの風景に戻りつつある。観光地では「体験型」として、商店街では「地域コミュニティ」として、またインバウンド消費の文脈でも注目されている。この記事では、なぜ駄菓子屋が令和の日本で“10円”という単価を維持しながら生き残っているのか、その経済的・文化的な構造を読み解く。
駄菓子はどこにある?:絶滅危惧種ではない
かつては住宅街の一角にひっそり佇んでいた駄菓子屋だが、現在は以下のような形で再発見されている。
- 観光地型:浅草や京都など、インバウンド観光客向けのレトロ体験
- チェーン型:「だがし夢や」などが全国のショッピングモール内に展開
- 地域密着型:地方の商店街で「子どものたまり場」として復活
一般社団法人日本駄菓子協会によれば、2023年時点で国内に約1,800店の駄菓子屋が存在し、うち新規開業は年50〜60件にのぼる。単なるノスタルジーではなく、現代に適応したビジネスとして生まれ変わっているのだ。
経済構造:10円菓子の利益率は意外に高い
駄菓子は単価こそ低いが、粗利率は非常に高い商品が多い。代表例を見てみよう。
| 商品名 | 単価(税込) | 原価率(推定) | 粗利率 |
|---|---|---|---|
| うまい棒 | 12円 | 約30% | 約70% |
| ヨーグル | 10円 | 約40% | 約60% |
| フエラムネ | 20円 | 約35% | 約65% |
また、駄菓子屋の主な収益源は以下の3つで構成されている。
- 菓子販売:粗利率60〜70%
- 玩具・くじ:原価20〜40%程度の高利益商品
- 体験提供:100円〜300円の「駄菓子詰め放題」や「くじ引き」など
小学生100人が1日あたり200円ずつ使えば、1日2万円の売上。低コストの運営体制を維持すれば、月20〜30万円の利益確保も現実的だ。
駄菓子屋が果たす“地域インフラ”としての役割
駄菓子屋は単なる商業施設ではなく、地域社会において次のような役割を担っている。
- 子どもの“たまり場”:放課後の居場所不足を補う社会的機能
- 高齢者との交流拠点:近所のお年寄りが見守る「ゆるやかな地域福祉」
- 地元イベントの起点:夏祭り、縁日などで中心的存在に
こうした背景から、自治体やNPOが補助金を出して駄菓子屋の維持・開設を支援する事例も増えている。例えば、岡山県では商店街空き店舗を活用した「駄菓子屋コミュニティ再生プロジェクト」が進行中である。
体験価値と観光資源としての“駄菓子”
観光地において、駄菓子屋は単なる物販ではなく「文化体験」として機能している。
- インバウンド向け:外国人観光客が昭和文化に触れる場所として人気
- 親子3世代の来店:親が「懐かしさ」、子が「新鮮さ」を体験
- メディア連携:「駄菓子屋食べ歩きMAP」やテレビ番組での紹介
また、近年は海外でも「JAPANESE DAGASHI」が注目されており、輸出や越境ECも増加傾向にある。1箱2,000円の詰め合わせが海外ECサイトで販売されている例も珍しくない。
おわりに
駄菓子屋は「古い商売」ではない。価格、規模、体験の面で独自のポジションを確立しており、むしろ令和のニーズに合致した「地域に根差す次世代型ローカルビジネス」として再評価されている。
10円という価格には、子どもたちの笑顔、地域とのつながり、そして低資本で成り立つ経済合理性が詰まっている。だからこそ、駄菓子屋は絶滅しない。
参照
- 一般社団法人日本駄菓子協会「駄菓子白書2023」
- 経済産業省『商店街活性化支援事例集』(2022年)
- だがし夢や公式サイト・店舗情報
- 日本観光庁『訪日観光消費動向調査』(2023年)
- 日本玩具協会『玩具小売市場2023』
- 海外ECサイト「Japan Crate」「Zenpop」販売情報
🔎 ポイントまとめ
- 駄菓子屋は観光・商業・地域拠点として多様に展開
- 利用率は極めて低いが、ゼロではない商品単価は低くても高粗利で成立する経済構造
- 子どもと高齢者を結ぶ地域インフラとしての機能
- インバウンドやECで「昭和文化」が国際価値に



