銭湯とサウナの二毛作戦略:なぜ“水風呂”に行列ができるのか
🔎 ポイントまとめ
- 銭湯はサウナと組み合わせることで再生し、“二毛作”戦略に成功
- 水風呂の質が“整う”体験を左右し、リピート率と単価を向上
- サウナ関連市場が拡大し、周辺プレイヤーも収益機会を得る
- 地域再生・観光・まちづくりとも接続するローカル経済の核に
はじめに
かつて地域の生活インフラだった「銭湯」は、少子高齢化と住宅事情の変化によってその数を大きく減らしてきた。しかし2020年代に入り、“サウナブーム”と“レトロ回帰”の波に乗って、再び注目を集めている。中でも注目すべきは、銭湯とサウナの“二毛作”化とも言える戦略的融合である。本稿では、地域銭湯がどのようにサウナと組み合わせて収益性と話題性を取り戻しているのか、その実態を紐解く。
銭湯業界の現状と課題
厚生労働省の統計によると、1990年代初頭には全国に約1万軒存在していた公衆浴場(銭湯)は、2023年時点で約1,800軒にまで減少している。背景には、個浴の普及、建物の老朽化、後継者不足といった構造的問題がある。
一方で、地方自治体による補助金制度や、リノベーションによる再生事例が全国で増加しており、特に若年層やインバウンド観光客に向けたブランディング戦略を採用する銭湯が目立ってきている。
サウナブームとの融合:二毛作戦略とは何か
日本国内では、2019年頃から”サウナ愛好家=サウナー”という言葉が流行語となり、サウナ施設のメディア露出が急増。『サ道』のようなサウナを題材にしたドラマもヒットしたことで、従来は中高年男性の領域だったサウナが若年層や女性にも拡大した。
銭湯業界はこのブームをいち早く取り入れ、既存の浴室スペースに高温ドライサウナ・水風呂・外気浴スペースを導入することで、新たな収益源を確保している。これが「銭湯+サウナ」の二毛作戦略である。
事例:東京都・武蔵野市「銭湯一の湯」
築50年以上の老舗銭湯をリノベーションし、薪炊き風呂+セルフロウリュサウナ+水深90cmの水風呂を導入。サウナ料金を別途500円に設定し、週末は若者で行列が絶えない。
“水風呂に行列”が示す収益構造の変化
従来の銭湯では、入浴料(大人500円前後)に依存していたが、サウナ利用者からの追加料金(300~800円)により、客単価は平均で1.5~2倍へと上昇している。
また、
- サウナハットやオリジナルグッズの物販
- 湯上がりビール・アイスの販売
- InstagramなどSNSでの“映え”空間による集客 といった間接的な収益導線も生まれている。
ポイント:水風呂の“質”がリピートを決める
利用者の間では、水温・水深・清潔さ・水流の有無などが細かく評価されており、“整う”体験の決め手として水風呂のスペックは非常に重要な要素とされている。これは単なる衛生設備としてではなく、“価値提供の中核”へと変化したことを意味する。
銭湯サウナの経済圏:誰が儲けているのか?
この銭湯+サウナ経済圏において、収益を上げているのは銭湯経営者だけではない。
- サウナ機器メーカー(METOS、HARVIAなど)
- サウナグッズのD2Cブランド(TTNE、SaunaCamp.)
- 体験設計を請け負うリノベ建築事務所(銭湯専業の設計士も登場)
- 地域観光プラットフォーム(銭湯+食+泊をパッケージ化)
といった周辺産業が共に“整い体験”を作り上げ、銭湯という伝統産業の中に新たなビジネスエコシステムが形成されている。
今後の展望:地域の余白を活かすサードプレイスへ
銭湯とサウナの融合は、単なるレジャー施設ではなく、“地域の再編”や“コミュニティ形成”にも寄与している。
- リノベ銭湯がある地域に若者が住み着く
- まちづくりと連動したエリアブランディング
- 空き家や遊休地を活用した移動式サウナの活用
といった動きは、単に「癒し」や「趣味」の場を超えて、都市と地方をつなぐ新しいインフラとして機能し始めている。
参照
- 厚生労働省「公衆浴場数の推移」(2023)
- 『サ道』(テレビ東京、2019)
- 日本サウナ・スパ協会「サウナの市場規模調査」(2023)
- TTNE公式サイト:https://ttne.jp/
- METOSジャパン:https://www.metos.co.jp/
- 地域再生銭湯事例集(まちづくり支援センター、2022)
🔎 ポイントまとめ
- 銭湯はサウナと組み合わせることで再生し、“二毛作”戦略に成功
- 水風呂の質が“整う”体験を左右し、リピート率と単価を向上
- サウナ関連市場が拡大し、周辺プレイヤーも収益機会を得る
- 地域再生・観光・まちづくりとも接続するローカル経済の核に



