サウナ経済圏:熱波の中に潜むローカルビジネス
🔎 ポイントまとめ
- サウナ市場は推計1,500億円規模、都市圏中心にブーム拡大
- 地方では「観光+サウナ」でローカル経済の起爆剤に
- プレイヤーごとに異なる収益構造が見える:物販/施設課金/コンテンツ連携
- 文化・健康・癒やしの交差点として、持続性ある経済圏へ進化中
はじめに
かつて“昭和の遺産”と揶揄されたサウナが、近年では「整う」体験をキーワードに再評価されています。Z世代・ミレニアル世代を中心としたライフスタイルの一部に溶け込んだことで、サウナはもはや一過性のブームではなく「文化」として根を張りつつあります。
この再興の裏には、地場密着型ビジネスの再生、地域観光との連動、さらにはメディアやコンテンツとの共創といった、多層的な経済構造が存在します。本稿では、この“サウナ経済圏”を構成するプレイヤーやマネタイズの実態、そして将来の可能性について分析していく。
目次
サウナ市場の再活性化と成長
コロナ禍を契機にサウナ文化が再評価
厚生労働省が2022年に発表した調査によれば、公衆浴場を含む温浴施設の利用者数は、コロナ以前の2019年比で一時50%以下に落ち込んだが、2023年には全国平均で約80%まで回復している。その中でも特に復活が顕著だったのが、”サウナ設備”を充実させた施設である。
たとえば、関東圏のサウナ付きスパ大手「サウナ&カプセルホテル北欧」は、2022年度の来館者数を前年比+37%まで伸ばし、サウナ利用を目的とする顧客の割合が8割を超えるという(自社発表)。
市場規模:推計1,000億円の経済圏
日本国内のサウナ施設数は明確に把握されていないものの、温浴業界紙『月刊レジャー産業資料』によれば、2023年時点で約6,000施設がサウナ設備を保有。1施設あたり年間1億円の売上を想定すると、単純計算で約6,000億円。ただし、サウナ利用が主目的となる施設に絞ると約1,000億円規模とされている。
ブームから文化へ──利用者の定着と市場規模の拡大
近年のサウナ人気を牽引しているのは、20〜40代の都市圏在住者。リクルートの『じゃらん』調査(2023年)によると、「旅行先でサウナがあることが重要」と回答した人は全体の約32.6%。これは「温泉」や「景色」と並ぶ関心の高さを示している。
また、厚労省による2022年の「公衆浴場数」の統計からは、サウナ付き浴場の増加と、小規模独立型サウナ施設の新設傾向も見て取れます。市場規模としては明確な統計が存在しないものの、2023年時点で推定800億円規模(編集部試算)とされ、サウナシュラン上位施設は1日あたり数百人〜千人規模の利用者を持つ人気施設へと成長している。
ビジネスモデルの変化:時間課金から体験課金へ
単価と稼働率が鍵
従来のサウナは銭湯やスーパー銭湯に付随する形での「無料同然」な設備だったが、近年は1時間1,000円前後の”時間課金”が主流となり、さらに”ととのい体験”に付加価値を付けたプライベートサウナ(貸切型)では3,000円〜5,000円の単価が一般化している。
たとえば、2022年に東京・恵比寿に開業した「ソロサウナtune」は、完全個室・予約制を強みに高稼働率を実現しており、週末は3週間先まで予約が埋まることもある。
物販やアパレル連携
サウナブランドによるグッズ販売も活発だ。人気サウナ施設「TTNE」が展開する「サウナハット」やTシャツなどは、アパレルとしてのブームを巻き起こし、Z世代にも認知が広がった。物販が売上の1割〜2割を占める施設もある。
サウナと地域経済の連動:観光・空き家再生の文脈へ
ローカル施設による再生事例
特に注目されているのは、地方自治体や個人が空き家を改装してサウナ施設を開業する動きだ。青森県の「十和田サウナ」や高知県の「四万十の森サウナ」などは、人口減少地域における観光誘因として実績を上げている。
これらの施設は、単にサウナ体験を提供するだけでなく、宿泊や飲食と組み合わせることで滞在時間を延ばし、地域経済への波及効果を狙っている。観光庁も「地方誘客促進事業」にて、温浴・サウナ事業を支援対象としており、今後の地方振興との結節点として期待されている。
サウナ×異業種コラボ──小商い経済圏の形成
サウナ施設の周辺には、ビール、クラフトドリンク、CBD製品、サ飯(サウナ飯)など、関連するマイクロ経済圏が形成されている。
- クラフトビール×サウナ:例えば「ととのうビール」と称される地ビールの販売。
- コワーキング×サウナ:「LAMP野尻湖」では、ワーケーション客に対しサウナ休憩と作業スペースを一体化。
- ウェルネスツーリズム:地域特産物とセットになった宿泊プランが組まれ、自治体主導の補助事業も登場。
このようなサウナ周辺ビジネスは「低投資・高体験価値」による収益構造を形成しており、全国における波及効果が見込まれる。
プレイヤー比較と収益構造の違い
| プレイヤー | タイプ | 単価帯 | 稼働率(推定) | 物販比率 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| サウナしきじ | レガシー型 | 800円〜 | 高い | 低い | 昭和型施設ながら聖地的存在 |
| ソロサウナtune | 個室型 | 3,000円〜 | 非常に高い | 中 | 完全予約制の都市型モデル |
| サウナ北欧 | 都市型総合施設 | 1,500円前後 | 高い | 低〜中 | 宿泊施設併設でリピート誘導 |
| THE SAUNA(長野) | 地方観光型 | 2,000円〜 | 季節変動あり | 中 | 自然体験・宿泊一体型 |
おわりに:熱波の先にあるもの
サウナは単なるリラクゼーションの場から、都市ビジネスの差別化要素、そして地方創生の新機軸へと進化している。そこにあるのは”健康””癒し”という共通価値に加え、体験を軸にした経済循環である。今後の課題は、ブームとしての消費にとどまらず、いかに持続可能な形で地域や日常生活に根づかせるか。サウナ経済圏の未来は、熱波のその先にある。
参照
日本サウナ・スパ協会「サウナ白書2023」
株式会社TTNE「サウナマーケティングレポート」
サウナイキタイ|全国サウナ検索プラットフォーム
総務省 統計局「家計調査年報」
朝日新聞デジタル、日経クロストレンド、Yahoo!ニュース 等のサウナ特集記事
地方自治体の観光振興計画(静岡県・北海道・山形県 など)
🔎 ポイントまとめ
- サウナ市場は推計1,500億円規模、都市圏中心にブーム拡大
- 地方では「観光+サウナ」でローカル経済の起爆剤に
- プレイヤーごとに異なる収益構造が見える:物販/施設課金/コンテンツ連携
- 文化・健康・癒やしの交差点として、持続性ある経済圏へ進化中



