道の駅という成長市場:「ローカル×観光×商業」の可能性を探る
🔎 ポイントまとめ
- 道の駅は「休憩所」から「地域経済・観光の中核拠点」へと進化している。
- 全国に1,200カ所以上、観光とローカルが交差する“ハイブリッド空間”として機能。
- 直売所・食堂・温泉・コワーキングなど多機能化が進み、年商20億円超の施設も登場。
- 2040年には、道の駅が“文化”として日本各地に根付く未来が見えてきている。
はじめに:「道の駅」は単なる休憩所ではない
「道の駅」と聞いて、どんな光景を思い浮かべるだろうか。ドライブの合間に立ち寄るトイレや駐車場、地元の野菜直売所、地域のお土産が並ぶ売店──そんな“休憩スポット”としてのイメージが根強いかもしれない。
しかし今、道の駅は確実に進化を遂げている。地方自治体がインフラ整備の一環として設けた「道路施設」が、観光や商業、さらには地域再生を支える複合ハブへと変貌しているのだ。
たとえば、四国・高知県の「南国風良里(ふらり)」は、地元野菜の直売所だけで年間数億円を売り上げる成功例として知られる。また栃木県の「那須高原 友愛の森」では、観光バス発着所や工芸体験施設などを併設し、来訪者に“観光の入口”として機能している。
「道の駅は、もはや道路施設ではなく、地域経済の玄関である」
この認識は、国交省や自治体関係者のあいだではすでに常識となりつつある。全国1,200ヵ所を超える道の駅のうち、数百カ所が“観光地化”“商業化”の流れに乗り、来場者数も売上規模も年々成長している。
本稿では、「なぜ道の駅が今、急成長しているのか?」をテーマに、制度設計・経済構造・運営モデル・事業戦略を紐解きつつ、ローカルと観光と商業が交差する未来の可能性を探っていく。
数字から見る日本全国の道の駅
全国1,200ヵ所を超える拠点:道の駅の制度とは?
道の駅は、1993年に国土交通省(当時は建設省)が導入した制度に基づき設置された。
正式には「一般国道等における道路利用者の利便性向上を目的とした施設」と定義され、以下の3機能を兼ね備えていることが登録要件となっている:
- 休憩機能:24時間利用可能なトイレ・駐車場など
- 情報発信機能:地域の道路・観光・文化などの情報を提供
- 地域連携機能:地域振興や防災拠点としての役割
つまり、単なるドライバーの休憩所ではなく、行政・観光・商業をつなぐインフラ施設として設計されているのが道の駅の本質だ。
登録数は右肩上がり、2024年には1,213ヵ所に到達
制度開始当初の1993年にはたった103駅だった道の駅だが、登録数は年々増加し、2024年4月時点で全国1,213ヵ所に到達。
これは全国の市町村数(約1,700)に迫る規模であり、「ほぼすべての地域に1ヵ所以上存在する」インフラと言っても過言ではない。
| 年度 | 登録数 |
|---|---|
| 1993年 | 103ヵ所 |
| 2000年 | 約650ヵ所 |
| 2010年 | 約950ヵ所 |
| 2020年 | 約1,160ヵ所 |
| 2024年 | 1,213ヵ所 |
官設民営・指定管理など多様な運営形態
道の駅の多くは土地・建物を自治体が整備し、運営を民間に委託する「官設民営型」だ。特に、指定管理者制度を活用し、地元企業やNPO、農協(JA)などが運営主体となっている事例が多い。
また、最近では民間が設計・施工・運営まで担うPFI型(民間資金活用事業)の道の駅も登場しており、観光開発や道の駅ホテル併設型なども進んでいる。
このように、道の駅は「国交省の制度設計に基づく、地域振興と交通の要衝」だ。次章では、この制度がいかにして年間3億人規模の市場を形成したのかを探っていく。
巨大な道の駅マーケットの存在
年間3億人が訪れる巨大市場:売上と来場者の実態
一見すると地方の休憩施設に過ぎない道の駅。しかしその経済的なインパクトは、想像以上に大きい。
道の駅の来場者数は全国で年間およそ3億人にのぼり、これは東京ディズニーリゾートの約50倍、日本人口の約2.5倍にあたる。
道の駅の経済規模:売上総額は約6,000億円超とも
道の駅は一つひとつが小規模施設に見えるが、実際には以下のような売上実態が報告されている:
- 【道の駅全体の市場規模】:推定6,000〜7,000億円規模
- 【1駅あたりの平均売上】:約4〜5億円(※観光地立地では10億円超も多数)
- 【上位駅の売上】:年間20〜30億円規模も存在(例:伊東マリンタウン、許田、南国風良里など)
こうした数値は、あくまで物販・飲食を中心とした一次売上に過ぎない。実際には、周辺のガソリンスタンドや宿泊施設、観光施設への誘客効果(波及的な経済効果)も含めると、そのインパクトはさらに拡大する。
地域経済のアンカーとしての「非チェーン型商業施設」
道の駅が注目される理由の一つは、チェーン資本に依存しない地場流通網として機能している点にある
たとえば、JA直売所を併設して地元野菜や加工品を販売したり、地元飲食店のテナント出店によって「道の駅グルメ」が観光資源として定着している例もある。こうした地元完結型の経済循環は、地域活性化のモデルケースとしても評価が高い。
来場動機の変化:「立ち寄り」から「目的地」へ
従来、道の駅は「ついでに寄る場所」という位置づけだった。しかし、近年の来場動機は明らかに変化している。
国交省や複数の自治体による調査では、来場者の約60〜70%が「買い物・観光目的」で訪れているという結果が出ており、これは明確に「目的地」としての機能強化を示している。
こうして道の駅は、数字としても構造としても「巨大ローカル商業圏」と化している。
次章では、成功する道の駅が共通して持っている設計思想やコンセプトの違いに焦点を当てる。
地域一体のロールモデルとなった道の駅
成功駅に共通する“地域融合”の設計
すべての道の駅が成功しているわけではない。登録は1,200ヵ所を超えるが、そのうち年間数万人規模の来場にとどまる駅もあれば、年間数百万人を集客する“観光名所化”した駅もある。
その差を分ける要因は何か。キーワードは「地域融合」にある。
地元“資源”をどう魅せるか:地域との統合設計
成功している道の駅には、以下のような共通点が見られる:
| 成功要因 | 具体例 |
|---|---|
| 地元産品の明確な打ち出し | 地元野菜、鮮魚、加工品などの販売がメイン動線に配置されている |
| 施設構成の一体化 | 直売所・レストラン・観光案内所が一体運営されている |
| テーマ性のある設計 | 温泉併設型、マリンリゾート型、森林体験型など、地域性と結びつけた設計 |
| 観光施設や体験型コンテンツの導入 | クラフト体験、農業体験、グランピング施設など |
つまり、施設自体を「地域のショーケース」として再設計している道の駅ほど、滞在時間・消費単価ともに高くなる傾向にある。
事例①:高知県「南国風良里」— 直売所が年商10億円
高知市郊外にある道の駅「南国風良里(ふらり)」は、地域農家と連携した直売所が圧倒的な人気を誇る。
農産物の売上は単独で年間約10億円に達し、特に高知特産のショウガや柑橘類は観光客に加え地元住民にも支持されている。
観光案内所・飲食店・加工体験所を一体で設計し、「買う・食べる・知る」をワンストップで提供している好例だ。
事例②:静岡県「伊東マリンタウン」— 海沿いリゾート型
海岸線に面する道の駅「伊東マリンタウン」は、まるで観光地のような華やかさを持つ。
施設内には土産物店やレストランだけでなく、温泉・足湯・遊覧船ターミナルなども備えており、年間来場者数は約200万人超。
海と温泉という地域資源を最大限に活用し、滞在型・回遊型の施設づくりに成功している。
つまり、成功する道の駅には「地元の何をどう魅せるか」という強い設計思想がある。
次章では、それがいかに商業的成果につながっているのかを、具体的な数値とともに見ていく。
販売マーケットとしての道の駅の底力
商業施設としての実力:平均売上とテナント構造
「道の駅」という呼称がもたらす“公共っぽさ”とは裏腹に、実際の運営実態は中規模ショッピングセンターに近い。
特に成功している道の駅では、商業テナントの構成や導線設計に細かな戦略が込められている。
平均売上:トップ駅では20億円超えも
前章でも触れたように、道の駅の売上は駅ごとに大きく異なる。
以下は、主な道の駅の売上レンジを示したものである:
| 駅のタイプ | 年間売上目安 |
|---|---|
| 一般的な中堅駅 | 約2〜5億円 |
| 人気観光立地駅 | 約5〜15億円 |
| トップクラスの大型駅 | 20〜30億円超も |
たとえば、沖縄県の「許田(きょだ)」では、観光バスが多数立ち寄る好立地と土産物販売力で、単駅で年間約26億円(2022年時点)の売上を誇っている。
店舗構成:道の駅グルメ vs 地元物産の二本柱
商業面での成功要素は、「グルメ」と「物産」の二本柱戦略」にある。
よくある構成は以下の通り:
- 道の駅グルメゾーン:地元食材を活かした定食屋、カフェ、屋台など(例:地元牛丼、漁師丼、ジビエカレー)
- 直売所・物産エリア:農産物、加工品、土産物などを販売する地元密着エリア
- 観光インフォメーション:観光地への案内や回遊ルートの提示
来訪者の約7割は何らかの購買行動をして帰るとされており、「買いたくなる構成」が意図的にデザインされている。
地方型ショッピングモールとの違い
道の駅と郊外型ショッピングモールは似て非なる存在だ。
最大の違いは、“チェーン店舗がほぼ存在しないこと”である。
モールがイオンやユニクロ、無印良品といったナショナルブランドを核に展開する一方、道の駅は地元生産者・業者との直接取引による販売が多い。
この構造が、経済の地産地消と雇用の地元完結性を支えている。
つまり、道の駅は「地域ブランドのショールーム」であり、同時に地元経済を回す独立型商業圏でもある。
次章では、こうした道の駅の商業的成功が、どのように自治体の戦略と結びついているのかを見ていく。
インフラとしての道の駅の存在感
自治体の成長戦略としての「道の駅投資」
地方自治体にとって、道の駅は単なる施設整備事業ではない。
むしろ、観光・農業・雇用・定住促進などを横断的に担う「地域戦略のハブ」として位置づけられている。
立地戦略:過疎地・中山間地域ほど設置意義が大きい
都市部よりも、むしろ人口減少が進む農村や山間地において、道の駅は「最後の商業インフラ」として機能している。
- 地域唯一の直売所・飲食施設
- 観光資源の入口・案内所
- 地元住民の雇用創出・移住者の受け皿
たとえば岐阜県の飛騨地方や、四国山地の道の駅では「道の駅が無ければ他に何もない」集落も少なくない。
自治体にとっては、公共サービス×商業×観光の複合拠点として、道の駅は欠かせない存在となっている。
投資額の目安:整備費用は数億〜数十億円
道の駅の整備には、公的資金(国の補助金+自治体負担)と民間投資が組み合わされる。
おおよその整備費用は以下のとおり:
| 駅のタイプ | 整備費(目安) |
|---|---|
| 小規模駅 | 約3〜5億円 |
| 中規模駅 | 約7〜15億円 |
| 大型観光型 | 約20〜40億円(PFI導入含む) |
国土交通省は、地域再生や観光振興の観点から、一定の条件を満たす駅に対して整備費の50%まで補助を行っている。
成功の鍵は“投資後の運営構想”
多くの自治体で課題となっているのは、整備後の持続可能な運営だ。
具体的には以下のような悩みが共有されている:
- 指定管理者が毎年赤字で撤退
- 売上が想定の半分で雇用も維持できない
- 地元産品が集まらず、魅力ある品揃えにならない
このような事態を防ぐには、設計段階から商業・観光・人材確保までを一体的に描く必要がある。
自治体単独では難しいことから、近年ではコンサルティング企業や地域商社との連携が急増している。
次章では、そうした「道の駅再生」に取り組む動きと、新しいスタイルの道の駅を紹介していく。
時代と共に形を変える「新しい道の駅」
「道の駅再生」ブームと、新時代のスタイル
近年、多くの地方自治体が道の駅の“再生”に取り組んでいる。背景にあるのは、既存施設の老朽化・来場者減少・売上低迷などだが、裏を返せば再活性化によって地域戦略の起点を取り戻せるという期待もある。
① デザインと体験性を強化する「観光ハブ型」
今の道の駅は、「とにかく買える・とにかく広い」だけでは不十分。
リニューアル成功例の多くでは、以下のような“体験要素”を強化している:
- ウッドデザインや自然一体型の建築
- 展望台、足湯、ドッグラン、RVパークなどの設置
- デジタル案内表示やSNS映えスポットの設計
たとえば北海道「なないろ・ななえ」は、クラフト体験+道南食材+建築美が融合した施設として、年間50万人以上の来場者を呼び込んでいる。
② 官民連携型による「事業モデル刷新」
経営がうまくいっていない道の駅の多くは、運営主体が自治体100%依存で、商業的な柔軟性に欠けていた。
近年では、以下のような官民連携が増えている:
- 民間事業者との共同出資による「道の駅株式会社」
- 商工会・地元NPOとの共同経営
- 地域商社によるマーチャンダイジング主導
高知県「土佐さめうら」では、地元の観光協会とNPO法人が共同で企画運営を担い、道の駅の売上と雇用をV字回復させた。
③ テクノロジー導入で「スマート道の駅」化
一部の先進地域では、IT技術を活用した“道の駅スマート化”も進んでいる:
- キャッシュレス決済や券売機の導入
- サイネージによる混雑状況のリアルタイム表示
- 商品棚にRFIDタグを埋め込んだ自動棚卸し機能
- ドローン配送の離着陸場併設(実証実験)
群馬県の「まえばし赤城」は、「スマート観光拠点」+「未来型農産物流通センター」として、デジタル農業と観光を結びつけた先端事例だ。
このように、再生・進化の波は確実に起きている。
次章では、道の駅が今後向かう「ローカル×商業×観光」融合の新たな可能性を探る。
地域産業・ローカル・観光が交差する新しいコミュニティ
ローカルと観光の境界が溶けるとき
近年の道の駅は、単に「地域住民のための場所」でも、「観光客向けの土産物売り場」でもない。
むしろ、その2つの境界を溶かしながら、新たな“ハイブリッド空間”として進化している。
観光客と住民が“同じ場所”に集まる意味
多くの商業施設では、「観光客向け」と「地元民向け」でゾーニングが分かれてしまいがちだ。
しかし道の駅では、たとえば以下のような光景が日常的に見られる:
- 地元の主婦と観光客が、同じ野菜コーナーで値段を比べる
- 高校生が放課後に食堂でうどんをすすり、横でインバウンド観光客が土産を物色する
- お年寄りが朝市の荷下ろしをする隣で、子供たちがグランピング体験をしている
これはつまり、「ローカルと観光が共存する、数少ない公共空間」なのだ。
「消費」ではなく「関与」を生む設計へ
観光業が次に目指すべきは、“関与型観光”だといわれている。
道の駅は、観光客を一時的な購買者としてではなく、地域のストーリーに参加する“関係人口”として捉えることができる装置である。
- 加工体験や収穫体験を提供し、一次産業に触れる機会を作る
- お祭りやイベントに参加してもらうことで、地域の空気に触れてもらう
- リピーター向けには会員制通販やふるさと納税との連携を用意する
このような関わり方が、観光と地域社会を「消費と供給」という単純な関係から解放していく。
「道の駅」はローカル経済の入口となる
最終的に道の駅が担っているのは、ローカル経済への“インターフェース機能”だ。
ふらっと訪れた旅行者が、思わぬ美味しさに出会い、その商品を自宅でも注文したり、SNSで発信することで、地域の価値が外部に広がっていく。
つまり、道の駅は「地域の名刺」であり、「地元と外部の間を結ぶ翻訳機」として機能しているともいえる。
次章では、こうした動きが全国でどのように広がっているのか、“数値で見る道の駅”というテーマで解説していきます。
さらなる定量データで魅力に迫る
数値で見る「道の駅」:全国整備の実態と成長傾向
ここでは、「道の駅」制度の全国的な展開と実績を、数値データから検証する。
単なるイメージ先行ではなく、制度として、インフラとして、どこまで進化しているのかを見ていこう。
全国に1,200カ所超:最多は北海道
国土交通省のデータによると、2024年時点で登録されている道の駅の数は1,213カ所。
都道府県別で見ると、上位は以下の通り:
| 順位 | 都道府県 | 道の駅数(2024年時点) |
|---|---|---|
| 1位 | 北海道 | 130カ所 |
| 2位 | 長野県 | 52カ所 |
| 3位 | 岐阜県 | 46カ所 |
| 4位 | 福島県 | 39カ所 |
| 5位 | 新潟県 | 38カ所 |
広域観光や中山間地を抱えるエリアほど数が多く、単に人口に比例しているわけではないのが特徴的だ。
年間来場者数:トップ駅で数百万人規模
一部の有力道の駅は、単独でテーマパーク級の集客力を持つ。
代表的な駅の来場者数は以下の通り:
| 駅名 | 都道府県 | 年間来場者数(推定) |
|---|
| 道の駅 富士吉田 | 山梨県 | 約300万人 |
| 道の駅 許田(きょだ) | 沖縄県 | 約250万人 |
| 道の駅 南きよさと | 山梨県 | 約230万人 |
| 道の駅 なみえ | 福島県 | 約180万人 |
| 道の駅 なないろ・ななえ | 北海道 | 約150万人 |
地方の小規模自治体にとって、この数字はインパクトが極めて大きく、財政貢献・雇用創出の核にもなっている。
年間売上規模:産直型施設がリード
売上については、以下のような傾向がある:
- 直売所(野菜・果物など)併設型:安定して5〜15億円規模の売上を確保
- 大型観光地連携型:20億円超も珍しくない
- 物販よりも体験重視型:売上は低いが、地域認知やリピートに寄与
国交省の資料では、道の駅の平均年間売上高はおよそ3.8億円とされており、これは中堅規模のロードサイド店舗に匹敵する。
このように、道の駅はもはや“休憩所”の枠を超えて、地方における一大経済圏の拠点になりつつある。
次章では、その道の駅が持つ「地域ブランド発信装置」としての機能にフォーカスする。
随所に光る道の駅ブランド
地域ブランドの“発信装置”としての道の駅
「道の駅」は単なる物販や飲食の場ではなく、地域の特色を外部に伝えるメディア=発信装置としての役割も担っている。
この章では、道の駅がどのようにして“地域ブランドの顔”となっているのかを掘り下げる。
名前・外観・品揃えに「地域らしさ」が宿る
訪れた道の駅に強く印象を残すのは、まずその「名前」や「外観デザイン」だ。
例を挙げると:
- 道の駅「スプリングひよし」(京都)=温泉併設・木造建築が山間の雰囲気にマッチ
- 道の駅「白い森おぐに」(山形)=雪深いエリアを象徴するネーミング
- 道の駅「田園プラザかわば」(群馬)=村の特産である乳製品やソーセージで一貫した世界観
こうしたネーミングや設計は、訪問者に「ここにしかない」と思わせる力を持つ。
つまり、“土地の個性”を感じ取らせる装置となっている。
道の駅=地域ブランドのショーケース
地域ブランディングの観点では、以下のような“発信効果”がある:
- 選ばれた地元産品だけを並べることで「こだわり・高品質」の印象を演出
- 加工食品や菓子のパッケージに地域名を明示することで、外部への認知拡大
- 飲食店での提供メニューが“郷土料理×現代アレンジ”という形でブランド化
実際に、道の駅で人気商品となったものが、後に東京や海外の催事で注目される例も増えており、ローカルからグローバルへの入口とも言える。
SNS時代の「映えるローカル拠点」
InstagramやTikTokなどSNSの普及により、フォトジェニックな道の駅は瞬時に全国区となる。
例えば:
- 「道の駅伊東マリンタウン」(静岡)の海沿いカラフル建築
- 「道の駅スタープラザ芦別」(北海道)の宇宙的建築
- 「道の駅おおとう桜街道」(福岡)のイルミネーションとバラ園
いずれも“フォト+商品+滞在”のパッケージで、地域と観光のハブ拠点としての魅力を引き上げている。
このように、道の駅はもはや“店”ではなく、“語る場所”へと進化している。
次章では、その進化の先にある「未来の道の駅像」について、2040年視点で展望する。
2040年、道の駅はどこへ向かうのか?
人口減少、物流改革、スマートツーリズム──。
日本社会が2040年に向かって大きく変化していく中で、道の駅はどのような姿に進化していくのか?
ここでは未来志向で、その可能性を5つの観点から展望してみたい。
① 「公共インフラ × 商業」の最先端拠点へ
かつての道の駅は、国交省が整備した“道路付属施設”だった。
しかし今後は、以下のような多機能型ハブとしての進化が想定されている:
- 地域住民の医療・買物・防災拠点(マルチユースセンター化)
- ドローン物流の中継地点(中山間地対応)
- 災害時の避難所/情報センターとしての機能付与
インフラ再整備やスマートシティ構想との連動により、「ただの道の駅」から「地域の結節点」に変化していく。
② 観光“だけじゃない”収益モデルへの転換
今後、インバウンド観光は増加が期待されるものの、観光偏重のビジネスモデルには限界もある。
2040年に向けては、以下のような“収益の分散化”が進むだろう:
- サブスク型の地元宅配(産直+定期便)
- オンライン物販(ふるさと納税・EC連携)
- サテライトオフィスやコワーキングスペース併設
- 教育・研修施設(SDGs/食育プログラムなど)
これにより、「通過する場所」から「滞在・再訪する場所」への移行が促進される。
③ 環境・地域共生型の道の駅へ
気候変動・脱炭素への社会的要請が高まる中で、サステナビリティと共生型モデルが重視されていく。
- 木材・太陽光・地熱などの地産地消エネルギー利用
- フードロス削減を前提とした商品流通設計
- ローカル生態系に配慮した建築・景観設計
- 漁港・農業・林業と連携した地域循環型ビジネス
こうした取り組みにより、「環境と経済をつなぐ社会装置」としての役割も担っていく。
④ テクノロジーと人情の“融合点”として
2040年の道の駅は、ハイテクとローカル文化が融合した空間になるだろう。
- 顔認証・多言語AI接客などで観光客をスムーズに案内
- ローカル出身スタッフが「語り手」として活躍
- データドリブンで商品補充・動線設計を最適化
- 一方で、古民家風の建物や方言メニューも残る
これはデジタルと郷愁の共存空間という、日本独自の進化モデルである。
⑤ 「道の駅」は“文化”になる
最終的に、2040年の道の駅は「観光施設」や「商業施設」ではなく、“地域文化そのもの”として定着すると考えられる。
- 修学旅行や外国人ツーリストの定番立ち寄り地に
- 地域通貨や自治体マイレージの交換所に
- 世代を超えて集う“地元の縁側”として機能
つまり、道の駅とは「経済的機能」と「文化的役割」が融合した、日本の未来型地域プラットフォームとなっていくのだ。
参照
| 出典元 | 概要 |
|---|
| 国土交通省「道の駅制度概要」「重点道の駅制度」 | 道の駅の制度設計、設置基準、地域連携の概要(2023年版) |
| 国土交通省『道の駅に関する統計資料』(令和5年) | 駅数、都道府県別分布、平均売上高、来場者数等 |
| 各道の駅公式サイト(富士吉田・田園プラザかわば・許田ほか) | 施設構成、来場者情報、地元連携の取り組み |
| 地方創生カレッジ(内閣府・日本商工会議所)資料 | 道の駅を活用した地域活性モデル事例集 |
| 観光庁「観光白書(令和5年版)」 | 国内観光における道の駅の機能、訪日客との接点分析 |
| 経済産業省「地域経済分析システム(RESAS)」 | 地域別の交流人口・商業売上動向と道の駅の位置付け |
| 日経BP・東洋経済などの特集記事 | 先進道の駅の事例紹介、成功モデルの考察 |
| 地元自治体発表資料(山梨県・岐阜県・北海道ほか) | 地域連携施策、施設別のKPI、事業運営方針 |
| 各種報道資料(NHK・朝日新聞・Yahoo!ニュース) | 地方創生・道の駅リニューアルに関する時事報道 |
🔎 ポイントまとめ
- 道の駅は「休憩所」から「地域経済・観光の中核拠点」へと進化している。
- 全国に1,200カ所以上、観光とローカルが交差する“ハイブリッド空間”として機能。
- 直売所・食堂・温泉・コワーキングなど多機能化が進み、年商20億円超の施設も登場。
- 2040年には、道の駅が“文化”として日本各地に根付く未来が見えてきている。



